HISTORY

  • プロローグ

    プロローグ

    2002年2月、自宅の納戸にコツコツと床・壁を貼り大きな書棚をつくって、テーブル・ノートパソコン・友人から独立お祝いにと戴いたプリンターでどこにでもある平凡な設計事務所をはじめた。半年前、とにかく今のままではダメだと独立を思い立ち会社を辞めて、自由を手に入れたけれど何から始めれば解らずアルバイトで食いつなぎ、運気が変わると言われた2002年まで辛抱した。そして満を持して開業したのは良いけれど仕事の依頼のあては無く、とにかく何でも良いので仕事が欲しかった。そんな時に、知人から1件のプラン依頼が舞い込んだ。とは言っても、建築条件付き土地での希望プラン作成。とにかく仕事ができる。久しぶりにお客様とご要望や夢などのお話をしているのが楽しかった。湧き出るアイデアをまとめて渾身のプランを描いた。初めてのプレゼン。手ごたえ十分。お客様も喜んでくれている。

    数日後・・・「あの土地を辞めるので、土地探しからお願いできませんか?土地が見つかったら家もお願いしたいので。」 嬉しかった!アトリエイハウズの記念すべき1軒目の家づくりのお手伝いがスタートした。

  • 1回目の事務所移転

    1回目の事務所移転

    自宅1階の納戸事務所での仕事は、2階で騒ぐ子ども達の声や生活音との両立も難しく、ましてやお客様と話せるスペースなども無かったので、とにかく集中出来るスペースが欲しかった。そんな時に竹藪の中にある小さな倉庫(車1.5台分位)を格安で貸してくれるとの話があり1回目の事務所移転をした。今回も自分で床を貼り、ペンキを塗って、ドアを付け、電気を引いて、小さな打ち合わせスペースも造った。やっと自分の城が出来た。職人さんや問屋さんの営業の方も立ち寄ってくれる小さな事務所。幸い周りは竹藪だけに車を停める事には困らず、人が寄ってはBBQ。楽しい日が続いた。夏が過ぎ秋になり冬を迎えた。石油ストーブで何とかやり過ごしていたけれど断熱の全く効いていない倉庫の冬は壮絶。マウスを持つ手が悴み、夜に飲み残したコーヒーが朝には凍っている。外にしかない水道も凍り不便さが増してきた。
    もう少し快適な場所が無いかな・・・思い立つと即行動!

    • 2度目の引越し①
    • 2度目の引越し②

    2度目の引越し

    国道9号線に建つ、かつては有名だったテナントビル。最近めっきり元気がなくなっている建物に注目。ここなら駐車場も広いし、お客様にも判りやすい。オーナーに自分の想いをぶつけて家賃交渉も成立。2003年2月に2度目の引越し。

    テナントの中にある様々な造作家具を再利用しLOWCOST・HIGHDESIGNをテーマに今度は自分だけでなく大工さんにも手伝ってもらいテーブルをつくり・本棚をつくり、超快適な空間を手に入れた。また、11月にはもっとお客様とのコミュニケーションを広げて行けるようにと隣のスペースまで事務所を広げ、アトリエイハウズ初の「コンセプトショップ」をオープンさせ、今の形の原型が出来上がった。そんな快適な事務所で数々のお客様やスタッフ達との出会い。あっという間に6年が過ぎた頃、もっともっとアトリエイハウズの世界観を発揮できるスペースが欲しい!と3度目の引越しを決意し場所探しの日々が続いた。気になるスポットに出掛けては写真を撮り、イメージを膨らませ何度も何度も・・・

    • 桂下津林の倉庫①
    • 桂下津林の倉庫②

    桂下津林の倉庫

    そして2009年5月、桂下津林の倉庫に出会った。
    敷地も広い2階建ての倉庫は、まさに理想形の場所だった。早速リノベーションに取りかかり、1階は倉庫とエントランス、2階にはオフィスとコンセプトショップを計画。休み返上で床をめくり、壁を塗り、新しいスタイルを伝えるスチールの窓やドア・造作のテーブルや棚をつくりあげ、イハウズの世界観を表現した。

    2011年7月には、1階倉庫を利用し、箱だけをつくる家づくりではなく、インテリア・エクステリア・ライティングもトータルプロデュースできるアトリエイハウズのコンセプトを具現化した空間として「CAMP lifestyle factory」をオープン。

    この桂オフィスでは、毎年夏にパーティーを開催し五感を刺激する様々な企画で沢山の人との出会いの場になり、本当に居心地の良かった桂オフィスだったが、諸事情により移転を余儀なくされる事態に遭遇し、またまた新天地探しの時がやって来た。

    • 辿り着いたところ①
    • 辿り着いたところ②
    • 辿り着いたところ③

    辿り着いたところ

    所帯も大きくなったイハウズにとっての今回の移転は様々な条件を満たす必要があった。お客様と快適に打ち合わせ出来る空間として利便性が高い場所である事。毎年開催していたパーティーを継続できる場所である事。CAMPを新たなイハウズの出会いの場として親しんでもらえる空間がつくれる場所である事。そして新しい発見や挑戦にふさわしい場所である事。候補地として緑豊かな宝ヶ池周辺や利便性の高い丹波口周辺、歴史の深い東山周辺など今回も様々な場所に出掛けた。

    どうして西京極だったのか?
    利便性が特別良い訳では無いけれど、悪い訳でもない。西京極運動公園と桂川があり、屋上からは西山から東山までの山の峰々・・自然を意外と近くに感じられる。まさに利便性と緑を両立出来るところだ。
    暮らし→人→健康→運動(スポーツ)→自然 Lifestyle Factory・・というイハウズの新たなコミュニティの創造が実現出来ると実感した。

    何の建物だったのか?
    元々この建物は、京漬物を製造する工場兼倉庫。出来た漬物を保管する大型冷蔵庫や重い樽をいくつ置いてもビクともしない床など昭和50年代としてはかなり重厚な鉄筋コンクリート造の建築。そんな一時代に輝かしく使われていた建物だったが、時代の流れと共に一度役目を終わらせて、ここ数年間は誰にも振り向かれず少し寂しさが漂う建物だった。
    そう、そんな建物だから僕たちが息を吹き返しイハウズの新たな世界観を発揮できる絶好の建物だった。

    そして今回のリノベーション
    1階を今まで分離していた倉庫と工房に2階は「CAMP」3階にはオフィス&コンセプトショップ。桂オフィスで作ったものを出来る限り移植しようと計画し、大きな鉄の扉を倉庫の出入り口に、イハウズのアイコンでもある赤いコンテナもエントランス正面にドカーンと。各セクションをスタッフで分担し、大型のオフィスデスクや造作キッチン、外部トイレ&シャワースペースは山小屋風にと個々にデザインし造っていった。現在も完成形ではなく、日々思いつくままに工事は進行している。

    • はじまり物語2①
    • はじまり物語2②
    • はじまり物語2③
    • はじまり物語2④

    はじまり物語2

    自分がビジョンに掲げた初のイハウズビル
    使って行くうちに色々とアイデアが湧いてくる
    第一弾、アイコンである赤いコンテナの上に日本一低い場所?にある山小屋を建てた。
    ここは、趣味ではじめたトレイルランがこうじて、友人の脱サラを応援しトレイルランショップ「monkey crew」を開店。
    西京極から少し走ると京都トレイル.西山トレイルにアクセス出来る好立地。
    走った後は、シャワーが浴びれて西京極運動公園を歩いて帰路に…
    そんな街とトレイルが繋がる事も実現したかった事のひとつ。
    第二弾、路面に立ちはだかる鉄扉の倉庫。
    カッコいいし、工務店っぽいよな…と思ってだけど、「怖くて入りにくい」って、お客様からの声を受け止めて、イハウズビルのフロントに相応しい「植物屋さんを呼ぼう!」ご縁のあった近くの花屋さんに「うちで植物屋さん、やりませんか?」とプロポーズ。
    「いいよ!」って二つ返事で誘致に成功。
    倉庫の3分の1を間仕切って工事スタート。
    細長くて可愛い植物店「grow」が誕生する。
    同時に暮らしの中にもっと緑をと
    「建築家とつくるボタニカルライフ」をコンセプトに掲げた「YI:ELD」事業を立ち上げた。

    この頃、世の中は先の見えない「コロナ禍」真っ只中。
    人を集めれない…
    それでも何とか距離を空けてのイベント企画もするが、第◯派の感染拡大やスタッフの体調不良などで、開催中止が続いた。
    2階に展開していた「CAMP」も人が来なくなっていき、事業自体も苦戦が続いた。
    引き裂かれそうな想いで「CAMP」を閉店。
    長く働いてくれていたスタッフも辞めた。

    そして第三弾が始まった
    「事業再構築」…政府が用意してくれた中小企業の復活応援プロジェクト。
    渾身のアイデアを詰め込んで事業計画を立てた。手応え充分。ドキドキの中、2022年冬に無事採択された。

    新事業に欠かせないコーヒー事業を任せるスタッフとの出会い。
    新たな挑戦を応援してくれていた家族の中からも次男・長女が賛同し入社する事に。

    2023年の春からビル内大改造。
    「mommy crew」を離れに移動
    「grow」をコンテナ前に移動
    2階をショールーム&オフィス
    3階をミーティングルーム
    2023年秋
    新事業「リノベーションセンター」をオープン
    「リノベーションセンター」の大きな役割は、リノベーションや家づくりのお手伝いをワンストップで提案する新サービス。
    更にお客様とアーキテクターを繋ぐ場所として
    「WESTEND COFFEE ROASTER」も同時オープン。
    ローカルエリアに佇む、地域と、ものづくりを繋ぐハブ的なコミュニティスペースになれればとの想いで。

    「リノベーションセンター」と「WCR」が出来たお陰で「イハウズビル」の人の流れが変わった。建築に縁のない方々が建築に興味を持つきっかけになったり、「WCR」には、連日多くの方が「癒し」や「刺激」を感じに来てくれている。たくさんのシェフやパティシエ達とコラボが実現。縁があり百貨店にも出店させていただいたり…

    後記
    「ピンチの後のチャンスあり」
    創業して20数年。
    50代半ばに百貨店売場に立つ事を想像、想定なんて全くしてなかった。
    今まで建築一本で歩んで来た自分にとってのコーヒー新事業は、新しいアイデア、出会いがもらえる刺激的なところだった。
    コーヒーは好きでも味なんか分からず、ましてや焙煎なんて全く分からず、そんな自分がいま「珈琲と建築」を少しでも身近に感じてもらえたらと思っている。